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(自伐型林業事例)森とつながり、人とつながる             

更新日:2023年1月27日


1月21日、熊本県山江村で始まった鎮山親水林業塾開校式の最後には、鹿児島県出水市で自伐型林業を行っている中尾雄基さんにお話を伺いました。“水とつながり、森とつながる”ことを目的に、自伐型林業を楽しく実施されていますが、ここまで来るまでのお話の中に、楽しさだけではないご苦労も伺え、今から自伐型林業に参入したい方にはとても参考になるお話てんこもりでした。                            



 


 中尾雄基さん(35歳)は、水俣市で平成29年に㈱WOODLIFEを設立。ビジョンは“森を通じて川、海、そして人をつなぐ”である。 水俣市において祖父、父親の代と素材生産・自然林の皆伐など林業に携わってきて、その後を継いだが、林業の研修で徳島の自伐林家・橋本光治さんの山に行き、いいなあと自伐に関心をもった。3年間は広葉樹の伐採をしていたが、止める機会をうかがっていた。コロナ過を機に、大型重機はみんな売り払って、自伐一本に絞り、現在、施業は仲間二人で実施している。  2年ぐらいかけて山林所有者を個々に当たり、山林の集約を図ってきたが、最初は所有山林がまばらに点在し、大変だったようだ。中尾さんが住む高尾野地区は700世帯人口約2,000人、森林面積は60%であるが、殆どが民有林。山主さんと委託契約を結んで長期の森林管理をしている。1年目でやっと合わせて1.5ha、まばらに小面積が点在しているので作業道も通せなかったが、7年経った今やっと6ヘクタールのまとまった山が集約され、まとまって間伐できるようになった。  現在集約化面積は約140ha、70筆に及んでいるが、一筆当たりの平均は0.18haである。そのうち57haを森林経営計画策定の対象として届けている。これは補助金申請のために契約山林の20%を登録したとのこと。森林環境保全直接支援事業(国補助金)、みんなの森づくり県民税(県補助金)、森林、山村多面的機能発揮対策交付金等の補助を受け、20%間伐を行っている。

 いろんな間伐箇所があるが、1年間5ha程。1ha当たり、50立米しか切ってないところも多い。ヒノキ山でまだ木が育っていないし、曲がり材や小さい木など劣性木を伐採している段階なので、C材も多いが、木材市場とバイオマス用チップ材として出荷している。施業個所は傾斜も緩やかなので作業単価も安い。劣性木なので値段も安く、木材市場よりチップ工場の方が高いので、より高く売れるように考えて施業する。現在、作業道は1年間に1500m程作設。皆伐は年間約0.5ha、立木伐採は随時行っている。間伐してもどうしようもないところは皆伐もしている。  段々間伐したところが広がっている。自分たちが間伐したところだけでなく、そこに至る林道もきれいになるので、他の人たちも入るようになり、そこでコミュニケーションが生まれ、いいなあと思う。

 間伐すると日が差し込み、1年で下層植生が豊かになるのを見るのは心地よく、楽しみながらやっているという。自分が作った道を見るのがうれしいという声は、多くの自伐林業家からも聞く。

 これからも。間伐を続けながら、地区の山林を集約していく予定であるが、違法伐採や大規模伐採など自分達ではどうすることもできないことも多いので、出水市に働きかけが必要。施業した自分たちの森を見て、山主さんにもはげ山になるより間伐した方がいいよねということを感じてほしい。 課題としては、売り上げが半分に落ちたので、ここをどう解決するかである。やはり週末林業とか副業と並行するのがいいのではと感じている。また、木材の単価を上げる工夫が必要。 ネガティブな話に聞こえたかもしれないが、実際は楽しみながらやっている。


*************************************  お話を聞いて、民間の所有者の山の集約を一から始められたご苦労がうかがえたが、地元でおじい様やお父様が林業をされていたことで、地元の方との顔つなぎは、地域外から参入するより恵まれていたかと思う。しかし、地方の民有林は本当に所有面積が少なく、それが子や孫に相続されている場合が多いので、所有者を辿りその了解を得るのは本当に大変である。所有者に自伐型林業の説明は大変だったでしょうとお尋ねしたことがあるが、「ただ、山の手入れをさせてくれ」とお願いしたとのこと。

 売り上げの減少を言われていた。まだ間伐量がすくないこともあるのだろうが、軌道に乗るのはやはり大変である。しかし、将来の希望が見えてくるお話だった。

 また、高尾野地区は海と国道に挟まれていることもあって、シカの食害はないという。球磨川流域は、シカ食害で人工林・自然林を問わず、林床植生は失われ、これのことが斜面や道路の崩落被害を大きくし、小さな登山道でさえ、整備してもすぐ壊れてしまうし、間伐して元の植生が戻ってくる可能性も低い。自伐型林業を災害防止の観点から考える場合にも、常にこのことを念頭においておかないと思う。

 出水市は、自伐型林業の推進を謳ってはいるが自伐に対する補助金は一切ないという。山江村の事例から、他の自治体の関心が高まればと期待したいところである。(報告:つる詳子)

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